大人の恋の痛手の癒やし方

若い頃、初めて味わう失恋の痛みが

余りにも辛くて

「もう二度と恋なんてしない」

なんて、どこかの歌詞にあるようなことを

本気で誓ったのを覚えています。

それでも恋の甘美な喜びの前では

若い心は余りに無力で

赤子の手を軽く捻るか如く

恋は若者を正気に留めておくには余りにも魅惑的で

フッと気を許すと隙間風のように

心の中に染み渡り

気が付けばカラカラに乾いた心に

あっと言うまに恋の炎を燃え上がらせてしまう

一度火が点いてしまえば

若いゆえの暴走はブレーキをつけない

ゴーカートのようにひたすらに突っ走る

曲がりくねった道も緩急なく

クラッシュしてボロボロになりながらも

ひたすらに走る

燃料切れが見えた頃

ボディよりもドライバーの心が先に

「疲れた…」と感じたら

その恋が終焉を迎える。

大人になれば、きっと色んな経験をして

恋も失恋もこんなに辛くはなくなるだろう…

そんな淡い期待を抱いていた。

二十歳、アラサー、アラフォー、アラフィー…

年をどんどん重ねるごとに

想像以上のたくさんの経験をしてきて

人との出会い、別れ、素敵な思いも、嫌な思いも

数えきれないほどしてきたけれど

たった一つ変わらないのは

失恋の痛みでした。

親兄弟、親戚、友人関係、あらゆる人間関係は

大人になったらきっと良くなる

大人になったらお金もたくさんあって

好きな服が買えて、好きなご飯が食べられて

行きたいとところ、行きたい国、

なりたいものになれると、多くの期待をたくさん

その小さな胸に抱えきれないほどの

大人への憧れと

今を逃れたい、と言う現状からの脱却が

私の生きる希望だった

でも

大人になっても相変わらず

焦がれる程の恋をして

ほどほどなんて恋は一度も経験したことはなくて

失恋の痛手は、あの頃よりも

ずっと深く感じて

今までの失恋を重ね合わせてしまうから

どんどん傷口は深くなるばかり

あの頃の方が、何も知らない無垢な気持ちの方が

痛みの深さを感じさせなかった。

恋の痛手は

ミルフィーユのように何層にも積み重ねられ

一度の打撃が

奥の寝静まった痛みまでを活性化させて

ちくちく心の内側から抉(えぐ)りだす

もう笑っちゃうくらい大人になったのに

相変わらず何の策も持てず

ただひたすらに無力な子供のままで

なす術も持たず

裸の心を弄(もてあそ)ばれているだけ

失恋の痛手に

私たちの心を安らかな安定から

熱いマグマの中に引き摺(ず)りだしてしまう

でも

だから恋はいくつになっても

私たちの心と体を熱くさせてくれる

いい大人の恋は

純粋無垢な気持ちを隠しながら

きっと死ぬまで

続くんだろうな〜と思う

それでいいんだと思う

生きてるってことは

痛みを知るから、喜びを感じられる

心と体を持つことだから

一つやってはいけないことがある

大人になると誤魔化すのが上手くなる

それは世間に対してだけでなく、

自分の心に対しても何もなかったような顔をして

傷ついていないフリをする

そんなことをしているうちに

だんだんと心の感度が鈍くなってしまう

心の感度を下げてしまうと

美しいもの、醜いもの、汚いもの、愛されていること

そんなことに鈍感になってしまう

だから

失恋で苦しんでいる同胞に伝えたい

失恋の痛みを味わう

それは辛いけれど

大人になってできるようになった

ただ一つの成長だということを

失恋の痛みを肴に

大いに自分をイジメ、辱(はずかし)め、労い、癒し、讃えながら

好きなお酒を

飲めないながらに嗜(たしな)む

そんな楽しみ方を覚えた

失恋したら

新しい恋を見つけよう

また失恋の痛みを味わうために

さて次のお供はどのお酒にしようか

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